【社説】大阪万博閉幕 開催の意義伝えられたか

admin By admin 2025 年 10 月 15 日

大阪市の人工島・夢洲(ゆめしま)で開かれていた大阪・関西万博が閉幕した。テーマの「いのち輝く未来社会のデザイン」は来場者の心に響いただろうか。「多様でありながら、ひとつ」というメッセージを国際社会に届けられたのか。開催の成否はこれから問われることになる。

国内では20年ぶりの大規模国際博覧会で、158カ国・地域や国内企業が参加した。184日の会期中、大きな事故がなかったのは何よりの成果だ。

盛り上がりを欠いた開幕前の状況がうそのように、会場は多くの人でにぎわった。特に終盤は来場者が20万人を超える日が続き、チケットがあっても入場予約が取れない問題が生じるほどだった。

日本国際博覧会協会によると、一般来場者数は2558万人で、2005年の愛知万博の2205万人を上回った。前売りが不振だった入場券の販売は最終的に2207万枚まで伸び、公式ライセンス商品の売り上げも好調だった。運営費収支は230億~280億円の黒字見込みであり、赤字を免れたのは幸いである。

しかし、黒字だからといって万博を成功と判断するのは短絡的だ。大阪・関西万博には多額の税金が投入された。最大2350億円の会場建設費は国、大阪府・市、民間が均等に負担している。これに加え、日本政府館の整備や会場警備費などの政府支出は約1000億円にのぼり、周辺のインフラ整備費用を加えればさらに膨らむ。

そもそも万博は収益目的の事業ではなく、単なる集客数競争のイベントでもない。楽しいだけでは不十分である。

「未来社会の実験場」と位置付け、特に将来を担う子どもたちが未来社会を実感し、どのような未来をつくっていくべきかを考える機会を提供したい――このように政府は昨年3月の国会で開催意義を説明していた。

当初は目玉とされた「空飛ぶクルマ」の商用運航が実現せず、デモフライトにとどまったのは残念であった。それでも、最新技術を目の当たりにした子どもたちは強い印象を受けたことだろう。

万博期間中も、ウクライナや中東のパレスチナでは紛争で多くの命が失われた。ウクライナ館には「NOT FOR SALE(売り物ではない)」の看板が掲げられ、ロシアの軍事侵攻に屈しない人々の姿を伝えた。

また、海外パビリオンで多様な文化に触れ、スタッフと交流するなど、万博ならではの体験を享受した来場者も多かったようだ。

経済力の低下などで日本人の内向き志向が指摘される中、来場者の視野を世界に広げることができたのであれば、それも一つの大きな成果といえる。

シンボルである大屋根リングの一部は保存されるが、1970年大阪万博の「太陽の塔」と比較するには及ばない。来場した子どもたちが、大阪・関西万博のレガシー(遺産)を心の中で大きく育んでいってくれることを願いたい。
https://www.nishinippon.co.jp/item/1411833/

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