【社説】公明が連立離脱 国会の停滞は許されない

20年以上続いてきた自公連立政権がついに解消されることとなった。自民党総裁に就任したばかりの高市早苗氏にとっては、想定外の事態と言えるだろう。
政権の枠組みが崩れただけでなく、国会の法案審議も一層不透明さを増している。多党化が進んだ国会にふさわしい合意形成が、与野党双方に求められている。
公明党の斉藤鉄夫代表は高市氏と会談し、連立政権からの離脱を正式に伝えた。これまで自民党に求めていた政治資金規制の強化について回答がなかったことが、決定的な理由となった。
公明党は、企業・団体献金の受け取り先を党本部と都道府県組織に限定する案を国民民主党とともにまとめている。自民党にも同意を求めていたが、回答は「これから検討する」とのことであった。斉藤氏は記者会見で「信頼回復には程遠い状況と言わざるを得ない」と断じた。
これは自民党の派閥裏金事件とその対応に対する強い不信感が背景にあることがうかがえる発言だ。実態解明はおろか、政治資金規制の強化も十分に進んでいない。この状況が、昨年10月の衆院選や今年7月の参院選での惨敗につながり、公明党も議席を減らした要因となった。
高市氏の自民総裁就任は、公明党にとって大きな転換点であったと言える。党内には保守色の強い高市氏への懸念が広がっていた。さらに、裏金事件に関与した萩生田光一氏が幹事長代行として復権したことも、公明党の連立離脱を加速させたのは明らかだ。
自民党と公明党は1999年に初めて連立政権を結成し、野党時代も含め選挙での協力関係を継続してきた。公明党は国土交通相のポストを維持する代わりに数々の妥協を強いられ、その堅い連携姿勢は「げたの雪」と揶揄されることもあった。
その中には、集団的自衛権行使の容認といった、公明党が掲げる「平和の党」としては受け入れ難い政策転換も含まれる。国民からの批判を浴びながらも、連立維持を優先し推進した責任は免れない。
高市氏にとって、公明党の連立離脱は甚大な打撃である。少数与党による国会運営はさらに困難を極めるだろう。
近く召集される臨時国会の首相指名選挙では、公明党は斉藤氏の名前を書く方針だ。衆院では立憲民主党、日本維新の会、国民民主党を合わせた議席数が自民党を上回っている。野党の首相候補の一本化は容易ではないにせよ、高市氏の首相就任も確実とは言えない。
公明党の西田実仁幹事長は国会を見据え、「中道改革勢力の軸となって政治を前に進める」と述べた。しかし、与野党のどちらに近い立ち位置かは判然としない。
今後、与野党の駆け引きは一層活発になることが予想されるが、数合わせに終始するだけであってはならない。物価高騰対策をはじめ、国民が求める政策の実行こそが最優先課題だ。国会審議をこれ以上先送りすることは許されない。
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